経理業務の経験がなくとも、簿記2級の資格を持っているだけで、採用企業の募集要件を満たせるだけでなく、資格取得を通じて培った経験を上手にPRにつなげていくことにより転職を成功させることができます。
とはいえ、簿記2級の保有資格者は毎年3万人近く出ていますので、母数が多いので資格を持っていることだけをPRしても、内定には繋がりません。
これまで、転職エージェントとして経理の転職を支援してきた経験と、現在管理部門長として、経理の採用を行っている経験から、簿記2級の保有資格を活かして、経理へ転職する方法についてご紹介します。
簿記2級保有者の転職先とは?
簿記2級保有者の転職先として、会計事務所、企業経理部、経理の派遣スタッフを選ぶ人が多いです。それぞれの転職とキャリアについては以下のような特徴があります。
求人数 | 待遇 | 得られるスキル | |
会計・税理士事務所 | 少 | △ | ○ |
企業 経理部 | 普通 | 〇 | 〇 |
派遣スタッフ | 多 | ◎ | △ |
会計・税理士事務所
会計事務所や税理士事務所は、離職率が低いものの人材不足が続いているので求人が出ています。採用人数が少ないので、求人が掲載されてもすぐに決まってしまう傾向にあります。
会計事務所等で働くメリットは下記です。
会計事務所は複数の企業の経理業務を経験できるので、短期間で経験を積むことができます。顧問を担当する公認会計士、税理士はの専門性が高く、担当する企業のことをよく知っているので、分からないことを教えてくれる環境があります。
会計事務所、税理士事務所で働くデメリットについては以下の通りです。
会計事務所での経験が積める一方で、給料待遇が悪い職場が多く、業務経験がなければ正社員でも月給18~20万のレンジになります。
また、意外にも会計事務所での業務はコンプライアンス的にグレーな業務も多く、実情を垣間見えてしまい、幻滅する、、ということは良くある話です。
求人の中にはブラック職場も混ざっているので、事務所選びがとても大事です。
企業 経理部
一般企業の経理部の求人は増え続けており、求人はとても多いです。採用する側も積極的になっているため、採用条件が低めになってきています。
「簿記3級をお持ちの方もしくは経理経験2年以上」のような水準で募集している求人がありますので、簿記2級を保有していれば評価されます。
特定の企業経理部に転職するメリットは下記です。
企業の経理で働くことで、業界知識や会計処理に関する知見を身につけられます。更に業務経験を積んでいくことで、社内での専門性を身につけることができるので、長期的なキャリアが期待できます。
一方で、転職活動が上手く進まないことも多いデメリットがあります。
大手企業になればなるほど、待遇が良くなり、倍率も高くなります。大手企業を狙っていきたいと考えている人は、転職活動期間が長くなることも考えておかなければなりません。
派遣スタッフ
業務未経験でも経理の仕事に就く一番の近道は派遣スタッフとして働くことです。派遣先は企業の経理部門や会計事務所など幅広く選ぶことができます。
派遣スタッフとして働くメリット
派遣スタッフならば、正社員の転職のように選考基準が厳しくないので、福利厚生や施設が充実している大手企業や大手会計事務所で働くことができます。
更には、派遣会社が提供してくれる福利厚生が充実していて、簿記や会計、ビジネスマナーなどの講座を無料で利用できます。
企業の社員として入社して間もないときは福利厚生制度を利用するのは気が引ける部分もなりますが、派遣スタッフは入社してからすぐに使うことができます。働きながら、勉強できるのでスキルアップに繋がります。
簿記2級を取得してからは1~2年以内であれば転職活動で評価されます。3年以上過ぎてしまうと評価されにくい傾向にあります。
「ブランクができてしまうと記憶から遠のいているのでは」と考えられ、「会計や経理に興味関心がある人だ」という印象になります。
取得してから時間が経っている場合は、志望理由を上手に説明していくことで、評価されるでしょう。
上手に資格をPRする方法とは?
簿記の資格を持っていることで、あなたの知識や理解を分かりやすく相手に伝わります。とはいえ、転職活動においては、簿記2級を持っているだけでは、内定を勝ち取るまでにはいきません。簿記2級の資格そのものをPRするのではなく、資格を取得した経験を通してあなたの人柄や意欲を伝えることです。
具体的には次のようなポイントをあなたの言葉で伝えることで、採用担当者の興味を引くことができます。
このあたりのポイントを交えて自己PRや志望動機を伝えることで、業務未経験からでも経理への転職がぐっと近づきます。
参考例
以前経験していた〇〇というプロジェクトの中で、コスト管理の重要性を認識して管理会計について興味を持ったことがきっかけで、簿記2級を取ろうと思いました。仕事を続けながら平日1時間勉強時間を確保して、2ヵ月で取得することができました。今後は、この知識をベースに新たな仕事において、学びの姿勢とともに業務遂行にまい進してまいりたいと考えています。
年代別の転職について
経理の転職では資格ではなく業務経験を重視されることが大前提にあります。簿記2級を取得したことだけでなく、社会人経験の中で培ったヒューマンスキルを交えてPRしていくと効果的です。
年代ごとにおすすめのPR方法についてご紹介します。
20代の転職
20代の転職は業務経験より若さがウリです。会社の経営数値を扱いますので、社会人マナーと倫理感を持ち合わせていること、経理への意欲を伝えると評価が高くなります。
これらについては、これまでの業務経験の中で培った仕事観について、具体的なエピソードを交えてPRすると採用担当の納得感が高まります。
30代の転職
30代の転職になると、若さを売りにした転職は難しくなります。一定の社会人経験とヒューマンスキルを評価されます。経理部として重宝されるのは、「現場とのコミュニケーションとれる人材」だと言われています。
経理に回ってきた申請書類の不備の指摘や期日までに提出すべき書類を促す作業など、他の部署とのコミュニケーションが必要になります。
そのような時にも積極的に行動できるかどうかで、大きく評価が変わります。
具体的に以下のような業務経験があると、選考での評価に繋がります。
「どのような立ち位置」「どのように仕事を進めていったのか」が分かるように説明すると良いです。何かしらを課題があって「どのように考え、解決するように行動したか」が伝えられれば、更に評価が高まります。
業務が違えど、面倒な仕事や辛い仕事に対して、どのように仕事に向き合うかという姿勢がPRできると良いでしょう。
40代の転職
40代からの転職は狭き門になります。40代の採用を控えている企業が考えることは次のような理由になります。
・部署の年齢構成を考えて、若手が良いと考えている
・新しいことを覚えるのに時間がかかるのではと思っている
このように考える会社に応募しても、書類の段階で選考が通らなくなります。
雇用対策法により求人広告に年齢制限を設けることが原則禁止されているため、応募の段階では40代以上の人も採用の対象になり得るかどうかが分からなくなっています。
そのため、30代以前と同じように転職活動を進めても、中々前に進まないというようになりかねませんので、戦略立てて進めていくことが重要です。
未経験から経理に転職するなら転職エージェントがおすすめ
簿記2級を取得してから、経理職へ転職を考えている人は、転職エージェントを活用することをおすすめしています。
< 転職エージェントを使う理由 >
① 経理未経験でも採用してくれる企業の求人を紹介してくれるから
② 企業それぞれに選考対策をしてくれる
③ 履歴書・職務経歴書の添削をしてくれる
④ 応募書類に「推薦状」を添付して魅力をプッシュしてくれる
転職エージェントは求人企業から人材確保の依頼を受けて、募集活動を行っています。求人の中には、ハローワーク転職サイトに載っていないような非公開求人も多く含まれています。
採用事情を知っている保有している求人の中から、業務未経験でも採用してくれる会社を選んで紹介してくれるので、求人選びの手間が省けます。直接会わないと伝わりにくいあなたの魅力を「推薦状」に書き添えて応募してくれるので、選考通過率が上がります。
面接になると、過去の面接事例や採用された人の傾向など、面接対策に必要な情報を事前に教えてくれます。未経験からの転職には心強い支援が受けられます。
経理未経験の人もしっかりと対応してくれるので、経理の転職に不安のある人は登録しておきましょう。
おすすめの転職エージェント3選
おすすめ度
【公式サイト】https://www.pasonacareer.jp/
『パソナキャリア』は、大手転職エージェントの中でも、丁寧なキャリアコンサルティングが評判で、幅広い相談を受け付けており、初めての転職活動を行う方におすすめです。
面談に訪問したときに全員に配布される『転職必勝ガイド』がおすすめです。職務経歴書の書き方や、面接質問集など転職活動の全体を理解するうえで非常に評判の良いものです。このためだけに面談するのも充分価値があります。
また、パソナキャリアは女性に転職に強いことも特徴です。女性のキャリアならではの悩みにも親身に対応してくれる、と評判が良いです。
経理としてのキャリアについて、経理職を志望するきっかけになったきっかけや現在抱えている悩みや今回の転職で叶えたい希望条件など、丁寧にヒアリングしてくれる面談で、しっかりと方向性を共有します。
ほぼすべての都道府県に面談拠点を持っているためサポートが手厚く、これから転職活動を考えている人にはおすすめです。
MS-Japan(職種特化型エージェント)
おすすめ度
【公式サイト】https://www.jmsc.co.jp/
『MS-Japan』は、管理部門に特化した転職エージェントです。業界内でトップクラスの求人を保有しています。「上場企業」「ベンチャー」「未経験可求人」など幅広く求人を提案してくれます。
経理、財務、人事、法務、財務など専門領域ごとにコンサルタントが配置されていて、担当するコンサルタントは業務の理解度が高いので、安心感があります。
管理部門に特化しているので、企業選考のノウハウが豊富です。面接前には事前に知っておくべき情報をメールで送ってくれるのでサポート体制も申し分ありません。
資格を取りたての方のキャリアパスの相談や50代以上のシニアクラス、管理職など幅広い転職の支援を行っており、経理職の幅広い階層の転職の相談に対応しています。個別面談にもすぐに対応してくれるので経理職で転職を検討している人はまず登録すべき転職エージェントです。
会社名 | 株式会社MS-Japan |
求人数 | 公開求人件数 1,567件(非公開求人件数 非公開) |
オフィス | 飯田橋、横浜、名古屋、大阪 |
リクルートエージェント
おすすめ度
【公式サイト】https://www.r-agent.com/
『リクルートエージェント』は、求人件数、転職決定数など業界No1の転職エージェントです。
ほぼすべての業界に対応しており、総合型転職エージェントです。こちらは他のエージェントと比較しても圧倒的な数の求人件数を保有しています。メディア運営、企業への高い営業力とコネクションにより、業界最大手に位置しています。
登録と同時に大手企業からベンチャーまで数十件紹介してくれます。興味のある分野を指定すれば、深堀りして追加の求人を提案してくれるので、求人リサーチに最適です。
選考に進むと『AGENT Report』と呼ばれるレポートで採用企業ごとに業界分析や過去の面接事例、質問内容などをまとめた資料を求人票と合わせて送ってくれるので選考対策に十分な情報を提供してくれます。
選考対策に関する情報を見ておくと、企業の求める人物像をより深く理解できるようになりますので、参考になる情報を提供してくれるエージェントです。
会社名 | 株式会社リクルートエージェント |
求人数 | 公開求人件数 1,154件(非公開求人件数3,339件) |
オフィス | 丸の内、札幌、仙台、宇都宮、さいたま、千葉、立川、横浜、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、福岡 |
まとめ
簿記2級を取得してから、経理へ未経験転職をするときに大事なことは、「未経験でも採用してくれる求人選び」と「選考対策」です。
未経験からでも採用してくれる会社は多いですが、闇雲に応募しても書類選考は通りません。転職エージェントを上手に活用して、経験者しか採用しないような会社を除外して紹介してもらうとスムーズです。
転職エージェントがそれぞれ保有している求人が違いますので、複数の転職エージェントに登録しておいて、求人を幅広く紹介してもらいましょう。
転職エージェント自身も転職者が決まってから年収の20~40%が成果報酬として売上になります。転職者の年収が高い職場であればあるほど、売上が上がるようになっていますので、真剣にサポートしてくれます。
とはいえ、転職者が転職しなければ売上にはならないので、営業の立場もあり、良い話ばかりの営業トークや転職を促すように薦めてくることがあります。他には無いような良い求人がありますが、転職エージェントの事情から条件と違うような求人を紹介してくることもあります。
そのような時は必ず応募しなければいけないことはありませんので、そのまま流してしまって問題なく、強くおしてくる場合は断ってしまって良いです。
紹介してくれる求人に興味があればそのまま応募できます。選考に進むとこれまでの転職実績やノウハウを教えてくれるので、経理未経験であってもどうやって内定を勝ち取るか?という視点で支援してくれます。
経理未経験であっても、簿記2級という武器を活かしながら一貫性を持って伝えられれば評価されますので、転職エージェントを使って転職を成功させましょう。
こちらの記事が経理の転職を考えるあなたのお役に立てれば幸いです。