・派遣の仕事で交通費自腹って違法ではないの?
・交通費が時給に含まれるってどういうこと?損なの?得なの?
・交通費を支給しない派遣会社はブラック企業?
などと派遣の仕事で交通費が出ないことについてお調べではありませんか?
1986年に派遣法ができて以来、長い間「派遣スタッフには交通費を支給しない」とされてきました。交通費が支給されないことでトラブルになることも珍しくありません。現時点での派遣業界の交通費事情について紹介します。
1.派遣で交通費を支給する割合は?
大手派遣サイト「リクナビ派遣」に掲載されている求人のうち2~3割程度の求人が交通費別途支給とされています。会社ごとに分けていくと1割程度の派遣会社が交通費を支給しているものと見られます。
職種によって交通費の支給があるか無いかの傾向があります。
交通費の支給がある:エンジニア、事務
交通費の支給がない:製造、軽作業、販売
同じ派遣会社であっても、交通費を支給する求人と支給しない求人があります。
交通費が支給するかどうかは、派遣会社の個別の判断によって決定しているといってよいでしょう。
2.なぜ派遣会社は交通費を支給しないのか?
派遣会社が交通費を支給しない理由は、このようなことが考えられます。
収支計算しやすいから
派遣会社の会計は非常にシンプルで「派遣料金の売上」と「人件費の支出」です。経費の種類が少ない事業なので派遣スタッフを雇えば、派遣スタッフが働き売上と支出、利益がほぼ自動的に計算することができます。
派遣スタッフが残業しても、休暇をとっても売上と支出の割合が一定なので、事業として計画がシンプルかつ運営しやすいです。
一方、時給に加えて交通費を支給すると、人によって毎月の通勤費を計算しなければなりませんので、人によって収支が違ってきます。
もちろん会社は交通費の支給額の上限を設定していますので、上限まで支払ったとしても利益がでるように時給を設定しています。
個別に交通費を設定していては、面倒で管理コストがかかるので交通費を支給せず、一律時給に上乗せしておこうと派遣会社は考えています。
他の派遣会社が交通費を支給していないから
そもそも他の派遣会社が交通費を支給していないから、自分の会社でも支給しなくても良いと業界的に考えられています。周りがやっていないので問題がなければ、交通費を支給せずに管理コストを下げたいと考えているのが現状です。
交通費の分を時給に上乗せして、なるべく時給を高く設定して応募を集めたいから
交通費を時給に上乗せすることで、採用する観点からも派遣会社にメリットがあります。
派遣の仕事を選ぶ上で最も重視するのが「時給」と言われています。転職サイトで求人を探すときに、時給でフィルタをかけて検索されるので、「時給1,100円 + 交通費」の求人より、「時給1,200円」の求人の方が応募が集まりやすいです。
時給をなるべく高くしようと考えて交通費分を上乗せしていることがあります。
交通費に時給が含まれるとは、労働基準法や賃金法などの法律的な用語にはありません。いわゆる交通費を支給していない派遣業界などの業界用語です。
そもそも労働基準法によると賃金(給料)とは、労働(実際にやる仕事)に対する報酬なので通勤は労働とは分けて考えますので、賃金(給料)と一緒にすることはありません。
派遣会社として「通勤交通費証明書」を発行する義務がありませんので、交通費を上乗せした時給のうち、いくらが交通費なのかを知ることはできません。
3. 交通費を時給に上乗せ、別途支給どっちが得なの?
交通費を上乗せしてもらった方が得なのか、別途支給してもらった方が得なのかについて、解説します。
前提として派遣会社からどれだけ交通費の分を上乗せさせているのか分からないと思いますので、今回は交通費を1万円とします。
今の時給から交通費分を引いたときの金額がどうか?を考えていきます。
1日8時間、月20日勤務の場合、月の就労時間は160時間となります。
10,000(円) ÷ 160(時間) = 62.5円
となります。時給から60円程度を引いた金額が高いか低いかを考えます。
『リクナビ派遣』などの派遣の求人サイトで交通費が別途支給の求人を調べて、自分の時給が高いか安いかで考えていきます。
極端な話ですが、東京都の派遣スタッフの時給が「1,050円」だったとします。2019年10月時点では、東京都の最低賃金は「1,013円」です。
派遣スタッフの時給が1,050円で、交通費が1万円かかっていたとすると、62円を引くと実質990円程度になるので、最低賃金より低い給料ということになります。この場合は、交通費を別途支給してもらった方がお得という考え方になります。
税金上は、時給に上乗せされると損する
平成13年に国税不服審判所が出した判例では、交通費として別途支給しているものでない限り、非課税として扱われないとされています。
そのため、交通費分を時給に上乗せした金額の分、多く所得税がかかります。
所得税の税率
195万円以下 | 5% |
195万円を超え 330万円以下 | 10% |
330万円を超え 695万円以下 | 20% |
約10~20%の所得税が多くかかりますので、月々1万円の交通費がかかっていたとすると年間1万近く税金を取られていることになります。
4.近年の交通費事情のトレンドは?
2019年になり、派遣スタッフの交通費事情が変わりつつあります。以前に比べて交通費を支給する派遣会社が増えてきています。
背景として、政府が働き方改革の一環で同一労働同一賃金の導入を進めていることと、人材不足が続いているからです。
同一労働同一賃金とは、正規、非正規雇用に関わらず、不合理な待遇格差を無くしていこうとするものです。「正社員に交通費を支給して、派遣スタッフには支給しないのはなんで?」ということです。
待遇格差を無くすために、「均等・均衡待遇」というものがあります。「同じように働いているのであれば、待遇も同じような水準にしなければいけない」というものです。
2020年の4月より派遣スタッフにも交通費を支給する流れになっています。さきがけて、ITエンジニア・ものづくりエンジニア系の派遣大手の『パーソルテクノロジースタッフ』は全ての案件で交通費支給としています。
5.よくある交通費Q&A
Q.現在派遣で働いているけれど、一時的な別の派遣先に勤務を依頼された場合は?
A.一時的に別の派遣の職場で働くように指示された場合は、交通費を支給してもらえる可能性が高いので、派遣会社に交渉してみると良いです。
会社からの指示で働く場合は、労働基準法によれば、会社からの指示による労働にかかる報酬(交通費含む)を何かしらの形で支払わなければならないとされています。(労働基準法11条)
Q.派遣が終了して、紹介された次の派遣先の職場は3万円近く交通費がかかるけれど、受けるべき?
A.2万円以上、交通費の負担がかかる職場は断ってしまった方が良いです。
一般的に会社では、交通費の支給上限を定めています。法律上、電車・バス通勤の場合月額15万円としていますが、多くの会社では2万円~2万5千円を上限にしているところが多いです。
2万円を超えるような職場を紹介してくる派遣会社は、保有している求人が少なく遠方の職場しか紹介できない、もしくは次の派遣先を紹介する気がない、派遣スタッフの交通費の負担額を考えていないなどの理由が考えられます。
このような求人ばかりを紹介してくる派遣会社は待遇が良くない求人を紹介してくることがあるので、別の派遣会社の利用を考えておくべきです。
おすすめ派遣会社
・テンプスタッフ|派遣業界No1の派遣会社。求人数が3万件、ほぼ全ての業界に対応。時給水準が高く、教育制度・福利厚生が充実。
・マンパワー|派遣スタッフ満足度96.28%。20代から50代まで登録できて大手企業の案件を紹介してくれる。
Q.同じ職場で働いている他の派遣会社のスタッフは交通費がもらえるのはなぜ?
A.交通費を支給するかしないかは、派遣会社に事情や考え方が違います。理由としては以下の3つのことが考えられます。
1.時給に上乗せしているから
2.派遣先との派遣料金が安くて、交通費を払うだけの余裕がないから
3.交通費以外の福利厚生制度に力をいれているから
派遣会社は、売上(派遣料金)から何にお金を使うかを考えます。派遣スタッフに交通費を支給するのか、派遣スタッフの時給を上げるのか、福利厚生制度を充実させるのかは派遣会社それぞれに特徴があります。そのため、交通費を支給する会社と支給しない会社があります。
>> 派遣会社のマージン率ってどれぐらい?相場・内訳・業界動向を徹底解説!
その他にも派遣会社の営業力によっても交通費を支給できるかどうか違います。営業力がある会社は、派遣先との派遣料金の交渉ができるので高い派遣料金もらっていますので、交通費を支給できます。しかし、中小零細の派遣会社など営業力がない会社だと、派遣料金を低くされてしまうので派遣スタッフの待遇が悪くなりがちです。
6.まとめ
派遣の仕事で交通費を時給に含んでいる、という考え方は、法律上の観点や求人を比較するときの指標としては正しくありません。
仮に交通費を支給していて時給が高く設定されているとしても、交通費の支給がない高時給な求人として考えておくのが正解です。
交通費の支給がある求人と交通費の支給が無い求人で迷った場合には、「毎月見込める総支給額」を考えておくと間違いありません。
こちらの記事が派遣で交通費が自腹で悩むあなたのお役に立てれば幸いです。