派遣会社でオススメされた「無期雇用派遣」って本当にいいの?
登録型の派遣と違い、期間に定めがない派遣の働き方として、注目を集めていますが、実際のところ何が良いの?正社員どう違うの?という疑問について詳しく解説していきます。
1.無期雇用派遣とは
無期雇用派遣社員とは、派遣会社と「期間の定めがない無期雇用派遣社員」として雇用契約を結び、登録型派遣社員と同じように派遣先で働く雇用形態です。
無期雇用派遣社員は、雇用期間は無期となっていますが、正社員とは全く別の雇用形態です。
2015年の派遣法改正に伴い、派遣会社は、雇用の安定化を図らせるために無期雇用される社員であれば、同じ職場に3年を上限して派遣される制限が無くなりました。
そのため、2017年あたりから派遣会社は登録型派遣とは別に、無期雇用派遣社員として採用する動きが始まっています。
派遣会社と無期雇用採用の一覧
派遣会社 | サービス名 |
リクルートスタッフィング | キャリアウィンク |
テンプスタッフ | funtable(ファンタブル) |
アデコ | キャリアシード・ハケン2.5 |
スタッフサービス | ミラエール |
マイナビワークス | マイナビキャリレーション |
マンパワー | エムシャイン |
派遣業界では、続々と無期雇用派遣社員を採用する企業が増えてきています。
各社、保有案件と正社員の福利厚生制度の一部を使えるようにして差別化を図っています。
無期雇用派遣社員は、正社員と登録型派遣社員の中間のような位置づけになります。
1-1.正社員・無期雇用派遣社員・派遣社員の違い
正社員、無期雇用派遣社員、派遣社員について、違いをまとめました。
正社員 | 無期雇用派遣社員 | 派遣社員 | |
雇用期間 | 無期 | 無期 | 有期(通常3か月) |
給与 | 年俸・月給 | 月給 | 時給 |
賞与 | 有 | 有 | 無 |
福利厚生 | ◎ | ○ | × |
選考方法 | 選考 | 選考 | 登録 |
対象年齢 | 20~40代中心 | 20代中心 | 全ての年代 |
派遣社員は、派遣先との契約のたびに、雇用契約を結んでいましたが、無期雇用派遣社員は正社員と同じように、選考を行い入社時に雇用契約を結びます。
正社員に近いと言われる一番の理由は、「雇用期間が無期」であることです。
「契約期間が○○月末」まで、というように終わりが決まっていないことが、働く人にとって一番の安心感になるのではないでしょうか。
現在は無期雇用派遣社員が、若年層の採用がトレンドとなっているので、20代限定とする採用求人が多いです。
1-2.派遣会社が無期雇用派遣社員を雇うわけ
2015年に派遣法が改正されたことに加え、派遣業界特有の事情から無期雇用派遣社員という働き方が生まれました。
無期雇用派遣社員で採用する理由
理由① 派遣社員の囲い込みがしやすくなるから
理由② 2015年の派遣法改正に伴う、「抵触日」への対策のため
理由③ 派遣先に引き抜きされにくくするため
派遣会社としても、長期的に安定して働ける人を採用したいと考えています。働く人にとって「期間限定でしか働けない」というニーズに応えた形になっています。
また、派遣業界の事情として、評価の高い派遣社員は派遣先の直接雇用の提案を受けることが多く、自社の派遣社員を引き抜きされてしまうことがあります。
そうなると派遣会社の売上が無くなってしまうため、無期雇用派遣社員にすることにより、引き抜きしにくくする目的があります。
法改正や経済情勢、採用市場の事情から「採用しやすく、辞めにくいような働き方」として無期雇用派遣社員が出来たといってよいでしょう。
2.無期雇用派遣社員のメリット
無期雇用派遣社員として働くメリットをまとめました。
メリット①時給制から月給制になる
無期雇用社員の最大のメリットは月給制になることです。月給制のメリットは、2つあります。
- 毎月安定した収入が得られること
- 待機時間中も給料がもらえる
時給制の場合、ノーワークノーペイが基本です。働いた分の給料はもらえますが、長期の休みや欠勤が続いた月は、月の収入が激減します。そのため、月の休日数によって、月の給料が変動するデメリットがありました。
無期雇用派遣社員の場合は、基本給(固定給)になりますので、月の給料額に大きな変動がないので、安定収入になります。
また、登録型の社員の場合、次の派遣先が決まるまでの間は雇用契約を結んでいないので、収入はありませんでしたが、無期雇用派遣社員の場合、待機期間の働いていないときでも給料が発生します。
もちろん派遣会社としても売上が上がらなくなってしまいますので、そうならないように新しい職場を探してくれます。
派遣先の仕事がなくなった時の不安が無くなることがメリットと言えるでしょう。次の仕事が決まるまでの期間は、用意された福利厚生制度の資格スクールや受講して過ごすことになります。この福利厚生制度は大手派遣会社が充実していますので、選ばれる理由になっています。
メリット②派遣先が確保されやすい
無期雇用派遣社員の場合、派遣会社から派遣先を確保してもらいやすくなります。
派遣会社としては、派遣先で働いてもらわなければ売上が上がりません。待機期間中は人件費が発生するので、優先的に派遣先をあっせんします。
派遣先としても婿雇用派遣社員であれば、辞めるリスクも少ないと評価しますので受け入れてもらいやすいので、二つの意味で派遣先を確保しやすいと言えます。
メリット③派遣法の「同一の職場で3年が上限」という制限が無くなる
登録型の派遣社員は、通常3か月ごとの更新で有期雇用契約です。この場合、派遣法で「同一の組織で派遣社員として働ける期間は3年間まで」と定められています。
無期雇用派遣社員の場合は、これが対象外となりますので「派遣は3年の上限」とされる3年ルールが無くなります。
細かく説明すると、更に「事業所の抵触日」が存在しますので、派遣先も3年ごとに派遣を延長することを労働組合等が許可しなければなりません。
現在のところは、事業所の抵触日が理由で、派遣が終了するケースは少ないようです。
そのため、無期雇用派遣社員であれば、今のところは同じ職場で働き続けることができると考えられています。
メリット④職種が定まるので、キャリアが築きやすい
無期雇用派遣社員の求人は「エンジニア」「事務」など職種を絞って採用されます。
派遣の働き方のデメリットの一つである、キャリアに一貫性がなくなるというリスクが無くなります。登録型の派遣や派遣会社の正社員として働いていると、「事務→受付→販売→事務」のように派遣先で任される仕事によって、キャリアが依存してしまいますのでスキルが身につきにくいと言われています。
無期雇用派遣社員であれば、職種を固定した働きかたができるます。事務職の無期雇用派遣社員であれば、事務スキルを中心に上げることができるだけでなく、色々な会社での経験を積めるので付加価値がつきます。
3.無期雇用派遣社員デメリット
派遣会社で無期雇用派遣社員として働くメリットがあれば、デメリットもあります。
デメリット①選考・採用がある
登録型と違い、採用のハードルが高くなります。特に年齢の制限がある会社が多く、ほとんどは20代までとされる会社が多いです。
手軽に働ける派遣の仕事と違い、正社員と同じように選考されるので2次面接ぐらいまで行う会社は多いです。
更に派遣業界の習慣として、「派遣先との顔合わせ・面談」を行ってから採用の合否を決めるケースも多く、選考プロセスが長くなりがちで、選考ハードルが高いです。
デメリット②自分で業界・職種・派遣先を選べない
無期雇用派遣社員として、派遣先を確保してもらいやすくなるメリットがある一方、派遣会社の保有している案件にあっせんしていきますので、その時の案件状況にキャリアが依存します。
登録型であれば、派遣先の勤務地や勤務時間、場所など働き方を自分で決めることができましたが、無期雇用派遣社員の場合は、派遣会社が派遣先を決めます。
業界や職種を希望することはできますが、必ずしも希望条件と合致した案件があるとは限りません。
派遣先が決まるまでの待機期間があると人件費がかかりロスが発生しますので、派遣会社としては多少無理にでもどこかしらの派遣先にあっせんします。
超短期間の派遣案件や経験とは全く違う分野の派遣先に押し込まれることもあり得ます。いわゆる人手が集まらない不人気求人です。
そうすると、派遣先が違うと通勤経路も毎回変わりますし、人間関係もリセットされていきますので、非常にストレスがかかります。
派遣先はあくまでお客様なので、同じ会社の社員がいないような職場が多いのでかなり神経を使うことが多く、辛いところです。
登録型派遣の良いところだった「自分が選ぶこと」ができなくなります。
デメリット③給与テーブルが決まってしまう
登録型の派遣社員は、経験やスキル、職場によって時給が決まります。そのため評価が高くなっていくと、単価交渉もしやすくなります。
しかし、常用雇用派遣社員の場合は、長期的なスパンで給料を定めていますので、退職防止を狙って、徐々に待遇UPさせていくので、短期的な昇給がしにくくなります。
また、給与テーブルが決まってしまうと、派遣で働く上での給料の上限が出来てしまうことになります。
デメリット④首都圏にしかない
無期雇用派遣社員は、仕事がたくさんある首都圏にしかありません。地方に転勤となるリスクが無いので嬉しいところですが、首都圏すべてが勤務候補地になりますので、通勤2時間かかる派遣先を紹介されることも覚悟しておかなければなりません。
あなたの住まいのエリアから電車の乗り継ぎが悪い場所だと、通勤ストレスかかります。案件紹介のタイミングが悪く、マッチングしなければ、通勤がきつくなります。
4.無期雇用派遣社員になれば、「待遇UPになる」とはならない
登録型の派遣社員から無期雇用の派遣社員になれば賞与や交通費が支給されることが多く、待遇が良いように見えますが、けっしてそうではありません。
派遣会社は、派遣先で派遣社員が働くことで、売上になります。
売上のうち60%程度を人件費として社員に支給していますが、60%の内訳が「時給」から「月給+交通費、賞与」になっているだけの場合がほとんどです。
当然のことですが、派遣先の会社としては、同じ作業あれば、登録型派遣社員であっても、無期雇用派遣社員であっても派遣会社に支払うお金は変わりません。
もちろん派遣会社の人件費比率が変わることはありませんので、もらえる給料は実はあまり変わっていないのです。
気分的に賞与や交通費をもらえる求人を見ると得した気分になりますが、実はそうではないです。むしろ使いもしない福利厚生費や退職金の積立金などすぐにはもらえないようなものが引かれていることがありますので、実は待遇UPしているとは限らないのです。
5.無期雇用派遣社員は正社員ではないので、安定ではない
無期雇用派遣社員は雇用期間が無期とされていますが、正社員ではありませんので派遣先が確保されなければ、クビになります。
正社員であれば、会社はあらゆる手立てを使ってでも雇用を守らなければなりません。しかし、無期雇用派遣社員の場合、「派遣先で働くだけの雇用契約」でしかありませんので、派遣先が無ければ、雇用契約が解除されます。
これは実質、「派遣切り」と変わりませんので景気が悪くなれば、一気に失業者が溢れかえることになります。
現在のところ、無期雇用派遣社員から正社員に切り替えようという企業の動きはありません。現在はとにかく無期雇用派遣社員として採用を増やしていこうとする傾向にあります。
派遣会社の正社員になると、派遣先で働くこともあれば、経理や営業などあらゆる部署で勤務する可能性があります。
バックオフィス含めて、無期雇用派遣社員の人数だけの正社員の仕事を確保することは現実的に難しいので、今後も方向性は変わらないのではないかと思います。
6.安定を目指すならば、正社員を探した方が良い
そもそも安定を求めて正社員を目指すのであれば、自分で正社員の仕事を探してしまった方が良いです。
エンジニアとして働きたい、事務職として長く働きたいなどと、職種を絞っている人でない限り、仕事を自分で選べる自由がある「派遣の良さ」を失ってまで、無期雇用派遣社員になることはないと考えています。
正社員の仕事を探すときには、派遣と同じように登録して、正社員の仕事を紹介してくれる転職エージェントを利用することをおすすめします。
転職エージェントは、職務経歴書の添削や応募企業ごとの面接対策など実績的なアドバイスを個別コンサルしてくれます。
現在も派遣で働く忙しい人でも応募書類の作成や面接日時の調整など転職活動の雑務を任せておけば、転転職活動の時間を作る手助けになります。
パソナキャリアであれば、派遣大手のパソナが運営しているエージェントで、正社員の経験が少なくとも丁寧にサポートしてくれます。
採用する企業からお金をもらっているので、費用はかかりませんし、非公開求人を多数保有していて、幅広く求人を紹介してくれます。
転職エージェントは、「応募者が不採用になった」、「入社後すぐに辞めてしまった」ときは報酬が発生しないため、真剣にあなたの転職をサポートしてくれます。
7.まとめ
「事務職専門の無期雇用派遣社員」などと職種を絞って働くのはキャリア形成の観点からおすすめできます。マイクロソフトやヤフーなどの大手企業で働くこともできるので、20代など若い時期のキャリアとしては評価されます。
正社員ほどの安定性はないので、派遣先を業務を通じて経験やスキルを身につけていかなければいけません。
派遣先の業界が転々と変わってしまうとキャリアの一貫性もつかず、振り返ってみると、何も専門性が身についていないことに成りかねません。
派遣会社が無期雇用派遣社員の派遣先をどのように決めているか、この派遣会社ではどのようなキャリアを築けるかを見定めておくことが大切です。
こちらの記事があなたの転職活動のお役に立てれば幸いです。