「今のまま研究職を続けても将来が不安だ...」
「今から転職できる場所を探すにはどうすればいい?」
「ポスドクからの転職先はどのようなところがあるの?」
ポスドク・研究職からのどのように転職活動を進めていけばいいのかなどと不安に感じていませんか?
ポスドクの待遇やポストの少なさが一つの問題になってきていますが、いざ転職を考えるとタイミングや転職活動そのものに悩む人も多いです。
現在転職エージェントとして院卒、ポスドクからのキャリア相談を受けることがありますので、それらの経験や業界知識から、ポスドクからの転職に必要な転職術やおすすめの転職エージェント、活用方法をご紹介します。
1.ポスドクからの転職を考える理由
アカデミアに長く居続けても、先行きが分からないなどと不安に感じ転職する人がほとんどです。人文などの文学分野においては無給もしくはアルバイト程度の給料しかもらえないケースもあり、待遇面が不安定と言われています。事情は様々ですが、共通する理由として以下の通りです。
- ポストが無いから
- 年収が低い、社会保険に加入していないなど待遇が良くないから
- 雇用形態が不安定だと感じているから
- 年齢的にも転職が難しくなってきているから
転職市場でも30代後半以降になると転職が厳しくなりますので、これからのキャリアの方向性を判断しているようです。
2.実は転職で活かせるポスドクの強みとPRポイントの整理
ポスドクという立場上、新卒とは違ったマーケットで転職活動を行う必要があります。新卒であれば体力があって、素直で、一から教育していくに当たって覚えが良いことを重視して採用されます。社会人経験がないポスドクとして学卒新卒だけでなく、他の転職者との差別化をする必要があります。
ポスドクの人たちは自覚があまりないかもしれませんが、世間一般と比較して研究を続けていることによってビジネスでも活かせるスキルが身についています。企業から評価されるポイントをまとめました。
ポスドクの転職者で評価されるスキル
- 研究における仮説、立証、体系化の論理的思考能力が活かせる
- 膨大な研究データを分析する統計知識、スキル
- 研究分野における専門性がある
- 論文作成、発表、海外文献を読み解く英語スキル
- 学歴フィルターで選考を落とされることは少ない
- プレゼンテーションスキル、マーケティングスキルなどのソフトスキル
- スケジュール管理、研究費等の予算管理など活かせるビジネススキル
研究過程における仮説検証能力はビジネスで良く用いられるPDCAと同様の思考です。統計等を使った分析などビジネスで用いられます。扱うデータや分野が違えど数字を扱う点では同様で、評価されるポイントです。投資銀行やマーケティング系などに有効です。
PRに盛り込めることとして英語スキルです。論文などの読解力や学会等の文章作成スキルなど評価されます。ビジネス英語と多少違う部分がありますが、かなり有効です。英語スキルを分かりやすくPRするためにTOEICを受験してスコアを取得するのもおすすめです。
3.転職が難しくなる企業側の評価を事前に払拭しておくこと
ポスドクの転職で書類選考と面接を突破するうえで、ビジネスに活かせるスキルPRに加えて、採用担当者がかかえるネガティブな印象を払拭しておくことが大切です。
- 組織内でのコミュニケーション経験が少ないのでは?
- 民間企業への転職の場合、損益に対する考え方が鈍くないか?
- プライドが高いのでは?
- 研究分野と異なる業界に転職するときの志望動機は?
アカデミアに長く居すぎることのネガティブなイメージが持たれがちです。応募するポジションで求められるスキルについて、これまでの経験からPRしていく必要があります。
組織間・内でのコミュニケーション経験が少ないのでは?
ビジネスにおいて関係者は取引先、協力会社、会社内他部署、上司、部下など関係者との調整をしながら仕事を進めていくことが多いです。利害関係が合わない相手などコミュニケーションを上手くとらなければなりません。これらのコミュニケーションスキルは経験しながらスキルアップしていきます。研究職においても、上司(教授など)や他の調査機関、研究所との連携など組織間・内のコミュニケーション経験をPRしておくと良いでしょう。
民間企業への転職の場合、損益に対する考え方が鈍くないか?
アカデミアの人たちは作業の生産性や納期への意識、その他人件費や諸経費削減に対する考え方があるのか?と思われがちです。
このあたりは、研究費の予算管理、研究に関わるスケジュール管理などビジネスに活かせる管理経験をPRしていきましょう。学会への膨大な諸準備などスケジュールを組んで進めた経験なども評価されることがあります。
プライドが高いのでは?
ポスドクならではですが、専門性があればあるほどプライドもしくはこだわりが高い人がいます。企業の採用担当者が一番気にするところは、「新たな環境でスキルを身につけていけるのか?周囲と良好な関係を築けるのか?」です。
既存社員や既存業務のキャッチアップなどスムーズに行えるかが重視されます。面接等の受け答えにおいては謙虚な姿勢と新たな環境で前向きに取り組む姿勢をPRしていくことが大切です。
研究分野と異なる業界に転職するときの志望動機は?
これまで培った専門性を活かして働く人は多くなく、新たな業界で働く人もいます。そのような時に「なぜこの業界なのか?」「なぜ競合他社でなくこの会社を選んだのか?」というロジックが求められます。
良くある志望動機は分野が違ったとしても共通するテーマやツールなど興味を持ったきっかけから興味を持ったことを伝えるとスムーズです。
書類選考の志望理由から面接対策まで入念に準備しておきましょう。
4.あなたのキャリアにマッチした会社を探すために
転職で新たな職場を探そうと考える場合、キャリアの方向性を決めるために情報収集がかかせません。これまでの上司や同僚から情報収集するだけでなく、幅広く情報を仕入れておくことをおすすめしています。
『ミイダス』を使って今の自分にニーズがある分野を知っておく
『ミイダス』は、転職支援会社大手のパーソルキャリアが提供する転職サイトです。あなたの経歴やスキル、希望条件を入力していくとあなたの条件に合った企業からオファーが来ます。こちらは書類選考が合格し、面接確約の求人です。
その他日経バリューサーチの業界レポート(有料)で提供されているものも無料で閲覧できるなどコンテンツも良いです。
注意点として市場価値判断として、ミイダスから想定年収を提示されます。かなり高めの提示される傾向にあり、転職者の転職意欲を高めるためと考えられます。この想定年収を鵜呑みにせず、オファーがくる求人があなたの経験やスキルを求める業界や会社の事業規模、職種だと捉えておく程度にするようにしましょう。
こちらのサイトから転職を決める人もいますので、自己分析および情報収集と転職活動ツールと考えて活用しましょう。
外資系でニーズがあることも多い
ポスドクの転職に外資系企業からオファーが来るケースがあります。日系企業以上にポスドクへの評価が高い傾向にあります。経営陣やメンバーがドクターの経歴を持っていることも多く、これまで培った専門性をしっかり評価してくれます。もちろん入社後どれだけ成果を出せるかどうかも同時にチェックされますので、選考対策を重ねておけば十分転職可能です。研究分野の外資系企業など候補に挙げておくと良いでしょう。
研究分野に近い領域のベンチャーで働く人も増えている
昨今では国内の資金調達ができる環境が出来つつあり、バイオ系やテック系のベンチャー企業に転職する人が増えてきています。専門性を活かせるだけでなく、同じような経歴を持ったメンバーがいると同じような価値観を持っており大手と比べると働きやすいという意見もあります。事業が成長していけばコアメンバーとして要職に就く可能性もある点で、大手でなくベンチャーを選ぶ人が多いです。
事業や会社の将来性、待遇に不安がある部分もありますが、企業調査を徹底しておくことでリスクを減らすことができます。
転職エージェントを利用して、ミスマッチを減らす
ポスドクの転職で最もつらいのが、これまでの専門性やスキルが十分に伝わらず書類選考で落ちてしまう、面接で伝えきれないことで不採用になってしまうことです。加えてポスドクの人を採用したいという企業を探すことも労力のかかる作業です。
転職エージェントはこれらの求人をあなたに代わって調査してくれます。外資系やベンチャー、転職先に人気の大手企業は非公開求人でエージェントに依頼する企業が増えています。
転職エージェントのサービス概要
- キャリア相談に乗ってくれる
- 経験にマッチした求人(非公開求人含む)を紹介してくれる
- 履歴書・職務経歴書を添削、面接対策をしてくれる
- 希望条件に合った求人検索、応募、面接日時の調整を代行してくれる
- 年収交渉を代行してくれる
転職エージェントは非公開求人を紹介してくれるだけでなく、未経験からの転職に不安がある場合はキャリア相談に乗ってくれます。同じような経歴の転職事例などを教えてくれます。
面接対策として求人企業に過去採用された人の傾向や評価ポイントを教えてくれます。過去の面接での質問事例集など有効です。
経験が浅い場合でも、会ってみないと伝わりにくいヒューマンスキルなどあなたの魅力を「推薦状」を応募書類に添付してあなたの代わりにプッシュしてくれるので、選考通過率を上げてくれます。
5.おすすめの転職エージェント
dodaエージェントサービス|業界No2。キャリアコンサルタントの質が高い
『dodaエージェントサービス』は、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)が運営する転職エージェントです。おすすめしたい点はキャリアコンサルタントの質が高いことです。キャリア相談や履歴書や応募書類の添削など丁寧に対応してくれますのでおすすめです。大手からベンチャーまで網羅していますのでまずは、登録すべき転職エージェントです。
特徴
- キャリアアドバイザーの質が高く、登録の面談◎
- 履歴書・職務経歴書の添削、キャリア相談におすすめ
リクルートエージェント|業界No1.転職ノウハウが充実
『リクルートエージェント』は、転職実績、求人数ともに業界No1の転職エージェントです。研究職やシンクタンク、コンサルなど業界問わず幅広いポジションの求人を保有しています。希望条件とのマッチングの精度がやや低めですが、圧倒的な求人紹介件数を誇りますので、半数以上の転職者がリクルートエージェントを登録しています。
特徴
- 業界最大手の転職エージェント。幅広く求人を探したい人におすすめ
- 蓄積された企業選考ノウハウが充実
JACリクルートメント|外資系、高専門職への転職に強い
『JACリクルートメント』は、業界No3に位置する外資系転職エージェントです。総合型転職エージェントの中でも、外資系、高年収、ハイクラスの求人に特化した求人を扱っています。企業担当者が直接キャリアアドバイザーについてくれますので、細かな情報を教えてくれます。管理職や専門性が高い求人を扱っているため、研究分野が違い、経験がマッチせず転職支援が受けられないことも考えられますが、外資系を狙いたい人は話を聞いてみることをおすすめします。
特徴
- 高年収・高専門職のハイクラス求人多数
- 外資系求人も扱っている
アカリク|院卒・ポスドクに特化した転職エージェント
『アカリク』は、院卒・ポスドク向けの転職支援を行っています。求人数が少ないものの院卒、ポスドクの経験やスキルを評価してくれる企業とコネクションを持っていますので、学歴ミスマッチのリスクを押さえられます。エンジニア関連、データ分析関連の求人に強いです。
特徴
- 院卒・ポスドク向けの転職エージェント
- ポスドクの転職活動の進め方などアドバイスをくれる
ワークポート|IT・Web業界のエンジニア職に強いエージェント
『ワークポート』は、キャリアコンサルタント(転職コンシェルジュ)という専任の担当がつき、非常に丁寧なサービスを提供しています。企業サイトや転職ツールを開発し、利用満足度が高いサービスを提供しています。面談後から使用できる『eコンシェル』と呼ばれるサポートシステムがあり、スケジュール管理など無料して使用できます。
ビジネス経験が無くとも、丁寧に対応してくれます。ポスドクからITエンジニア、プログラマーに転身したい人は登録しておきましょう。
特徴
- IT・Web業界に特化しており、大手からベンチャーまで求人を紹介してくれる
- 担当者の連絡やレスポンスが早く、使いやすい
6.転職エージェントのサービスの流れ
①登録する
PCやスマートフォンで2分~5分程度で登録が可能です。
名前、住所、年齢、電話番号、メールアドレス、会社名、保有資格、経験、スキルなど決められた項目に沿って入力していきます。
②連絡がくる
登録が完了すると転職エージェント担当者から電話もしくはメールで面談日時の連絡がきます。面談はオフィス、もしくは電話で行います。現在働かれている方は勤務の後の19時以降や土日など面談可能な候補日をいくつか準備しておきましょう。
③個別面談に行く
面談の時に、履歴書と職務経歴書を持参します。事前にメールなどでデータを送っておけば不要です。面談時には、経験のヒアリングや転職理由、次の仕事の希望条件を確認されます。
④求人紹介を受ける
面談で聞き取りが終わると、面談の最中もしくは終了後に求人を紹介してもらえます。2~20件程度紹介してくれる場合が多いです。
気になる所について、転職エージェントでも分からなければ、担当者経由で求人企業へ確認してくれますので、十分理解した上で応募意思を固めることができます。
⑤職務経歴書の添削
こちらは必要に応じて行います。修正すべき個所を教えてくれます。提出する書類に不安のある人はぜひアドバイスを受けるようにしましょう。
⑥応募する
企業への応募は転職エージェント経由で応募します。
その場合、応募書類はエージェントとの面談時に提出した書類を企業に提出するため、応募時には改めて書類を作成する必要はありません。
応募の都度、写真の準備や経歴書を準備するのは大変ですので非常に助かるサービスです。
人によってまちまちかもしれませんが、書類選考通過率はかなり高いと思います。これまで転職サイトなどを利用していた時と比べると格段に確率は上がると思います。
⑦面接対策
企業の書類選考が通過し、面接が決定した場合、事前に面接に向けて準備しておくべきポイントを教えてくれます。例えば過去に質問されたリストや知っておくべき業界知識やニューストピックなど様々です。
その他、選考の流れをも事前に教えてくれます。1次面接は現場担当者、2次面接は人事責任者といったように事前に会う人を教えてくれるだけでも心の準備ができるので、安心できることでしょう。
⑧採用企業との面接
面接の結果は転職エージェント経由で連絡がきます。面接で上手く説明できなかった、PR出来なかった場合には転職エージェントから追加であなたの魅力を採用企業へプッシュしてもらうことが出来ます。
⑨内定、給与交渉
年収交渉や内定後の入社までの調整もすべて転職エージェントが行ってくれます。
7.転職エージェントを最大活用するテクニック
複数の転職エージェントに登録する
こちらの記事で紹介した転職エージェントは扱っている求人や転職支援するスタイルが違います。転職エージェントを複数登録することで、自分に合った転職エージェントのスタイルや担当者を見つけることができます。転職エージェントも相性の良し悪しがありますので、あわないと感じた場合は利用を控えても問題ありません。2~3社登録してか自分に合った転職エージェントを見つけると良いでしょう。
求人企業の採用目的や求める人物像を確認しておく
転職エージェントは求人企業から人材確保の依頼を受けて募集を行っています。「業界知識を持っている人を求めているのか?」、「欠員補充なのか?」、「未経験からでも教育していく姿勢で素直な人を求めているのか」など採用目的や求める人物像を確認しておきましょう。
選考段階で企業の求める人物像に合わせてPRポイントが変えることで選考通過率を上げることができます。
面接対策は転職エージェントを利用して万全にする
転職活動で避けて通れない面接を突破するために転職エージェントを上手く利用して、面接対策を万全にしていきましょう。転職エージェントが面接対策をしてくれることは以下の3つです。
- 過去に行った面接の質問事例、評価ポイントを教えてくれる
- 採用活動の経緯や採用したい人物像を教えてくれる
- 模擬面接をしてくれる
求人企業と面接でぶっつけ本番で臨んでしまうと、面接の独特の雰囲気や質問の数々で緊張して上手く話せないということは良くある話です。事前の情報をもとに頭の中でシミュレーションを立てる、想定質問集に対して、回答例を準備しておくなどの準備をするだけでも面接の出来栄えは違います。
また、転職エージェントが行ってくれる模擬面接も有効です。本番同様の面接の流れを再現し、想定される質問を行います。志望動機など説明していくうちにスラスラと話せるようになりますので、繰返し練習しておくと面接力アップにつながります。
履歴書・職務経歴書は転職エージェントに添削を依頼する
職務経歴書の作成で悩む人が多く、「資格を取りたてて、これまでの業務経験で活かせるものがない」、「志望動機をどのように書けばいいか分からない」など人それぞれ困るポイントが異なります。そのような時に転職エージェントに経歴書の作成指導や添削を依頼することで悩みが解決します。
職務経歴書の添削
- 誤字脱字がないか、レイアウトは見やすいか
- 書いてある内容は分かりやすいか
- 自分のPRポイントや業務経験を書くポイントを考えてくれる
- 企業が評価するであろうポイントを織り交ぜて、修正してくれる
転職エージェントへの添削依頼は完成していない状態であっても、「作成途中でどのように書けばいいか相談したい」ということも相談できます。遠慮することなくアドバイスをもらいながら経歴書を完成させていく方が効率的です。
8.まとめ
如何でしたでしょうか。
ポスドクから転職を考えているときには、知識やスキルなど培った専門性を次の職場で活かせるようにPRポイントを整理しておきましょう。また、ポスドクの人たちを採用したいと考えている企業を探す上で転職エージェントは有効です。こちらで紹介したエージェントを情報収集も兼ねて2~3社登録しておきましょう。
ポスドクの転職におすすめの転職エージェントまとめ
・dodaエージェントサービス|業界No2。キャリアコンサルタントの質が高い
・リクルートエージェント|業界No1.転職ノウハウが充実
・JACリクルートメント|外資系、高専門職への転職に強い
・アカリク|院卒・ポスドクに特化した転職エージェント
・ワークポート|IT・Web業界に強いエージェント
こちらの記事が皆様の転職活動のお役に立てれば幸いです。